宇宙空間(スペーススペース)

僕が毎週日曜日、言葉遊びをこねくり回す空間。

東雲宵子。

僕、長宗我部駅地下は「東雲宵子を思い出してる。」という素っ頓狂な名前のバンドで作詞、作曲、歌を担当している。

(とは言え、今は宅録で音源を制作している段階で、お披露目はもうしばらく先になりそうなのだけれど)

完全に僕の独断で決めてしまったバンド名だが、まあ、このバンドの世界観とはすなわち僕自身のそれであるからして文句はあるまい。

さて、何故こんな酔狂な名前を思いついてしまったかと言えば、僕は高校生の頃に小説を書いていて、その登場人物の一人がずばり「東雲宵子」なのだ。バンドの名前を決めようと、その候補をいくつか挙げていく内に、かつて自分が小説を書いていたこと、アートフォームの原点がそこにあったこと、東雲宵子というヒロインがいたことを思い出した。

東雲宵子には、確かにモデルとなる人物がいたはずなんだけど、今となってはその顔も、名前も憶えておらず、むりやり記憶を辿ろうとすれば出来損ないのモンタージュのように、街ですれ違った女の目だとか、アダルトビデオに出てくる女の鼻だとかで補完されてしまって、ますます記憶情報は劣化していく。思い返せばそれほど虚しく変質、偏執していくのである。その無常、小説を書かんくなってしまった僕はもう、音楽で顕す他あるめえと「東雲宵子を思い出してる。」というバンド名を半ば強行的に採決したわけである。

きっと、僕だけじゃないと思うんよな。顔や諸々忘れてしまって、かろうじて声とか所詮その程度しか憶えてない、それでいて時たま強烈に思い出したくなる女がいるのは。僕はそういうのを、東雲宵子と定義することにした。

というわけで、さあ、誰にだっているはずの、東雲宵子を思い出せよ。以上。